遺言書があっても安心できない理由
1.「書いてあるのに揉める」相続は、なぜ起きるのか
「遺言書はもうありますから、大丈夫ですよね?」
相続相談の場で、よく聞く言葉です。
確かに、遺言書は相続トラブルを防ぐ非常に有効な手段です。
しかし一方で、遺言書があったにもかかわらず紛争になるケースも、実務では少なくありません。
なぜ、「最後の意思」を書き残しているのに、争いが起きてしまうのでしょうか。
ポイント
遺言書があっても、相続トラブルは珍しくない
主な原因は「方式不備」「内容の不明確さ」「遺留分」「想定外の事情変更」
遺言は“万能の魔法”ではなく、設計次第で効力が大きく変わる
2.相続トラブルの理由
(1) 遺言の「方式」に問題がある
遺言は、方式が厳格に定められています。
例えば自筆証書遺言の場合、全文自書、日付の記載、署名、押印
これらを欠くと、遺言自体が無効になります(民法968条)。
実際に、「パソコンで作成して署名だけした」「日付が書いていなかった」といった場合、無効となってしまいます。
(2) 内容があいまいで解釈が割れる
遺言が形式的に有効でも、内容が不明確だと争いの火種になります。
例としてよくあるのが、
「自宅は長男に任せる」
「財産は妻に多く残す」
といった表現です。
「任せる」とは相続させる意味なのか、管理を任せるだけなのか。
「多く」とは、どれくらいなのか。
このような場合、遺言の解釈をめぐってトラブルになります。
(3)遺留分を侵害している
遺言があっても、遺留分は消えません。
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分で、配偶者、子、直系尊属に認められています。
たとえば、「全財産を長男に相続させる」
という遺言があっても、他の子は遺留分侵害額請求をすることができます。
実務上、「遺言があるのに請求された」という不満は非常に多いですが、これは法律上、正当な権利行使です。
(4)相続人の事情が変わっている
遺言作成時には想定していなかった事情が、相続時に起きていることもあります。
相続人が先に亡くなっている、介護の負担が特定の人に集中していた、生前に多額の援助を受けていた人がいる
こうした事情があると、「遺言どおりだと不公平だ」という感情が強くなり、結果として紛争に発展しやすくなります。
3「遺言があるから話し合わなくていい」は危険
遺言があると、「もう決まっているから」と説明や配慮を省いてしまいがちです。
しかし、遺言があるからこそ、なぜその内容なのか遺留分への配慮はどうするのかを事前に整理しておかないと、相続開始後に一気に感情が噴き出します。
4 まとめ
遺言書は、相続対策として非常に重要です。
しかし、書けば必ず安心できるものではありません。
方式、内容、遺留分、これらを踏まえて設計されていない遺言は、かえって紛争のきっかけになることもあります。
5 ご相談
「遺言はあるけれど、この内容で本当に大丈夫なのか」
「将来、子どもたちが揉めないか心配」
こうしたご相談は、決して珍しいものではありません。
実際、問題が起きる前の見直しが、最も負担の少ない解決策になることが多くあります。
今ある遺言を前提に、どこにリスクがあるのかどう補強すればよいのかを整理するだけでも、将来は大きく変わります。
どうぞ、早い段階で一度ご相談ください。

