「争族」を避ける!円満な相続を実現するための生前対策
弁護士の藤本英子です。
相続は、時に家族の絆を深くする一方で、「争族(そうぞく)」となり、長年の信頼関係を破壊してしまう原因にもなり得ます。当事務所にご相談に来られる方々の中には、「まさか自分の家族が揉めるとは思わなかった」と深い悲しみを抱える方が少なくありません。
円満な相続を実現するためには、「亡くなった後」ではなく、「生きている間」に準備を始めることが何よりも重要です。
本記事では、家族の平穏を守るために弁護士が推奨する、具体的な生前対策を事例を交えて解説します。
対策1:相続の意思を明確にする「遺言書」の作成
最も基本的かつ強力な生前対策が、遺言書の作成です。
遺言書は、あなたの財産を「誰に」「何を」「どれだけ」渡したいかを法的に有効な形で示し、遺産分割協議の手間を省き、争いの種を摘むことができます。
【事例で解説】
- ケーススタディ: 夫、妻、長男(同居)、二男(遠方)の家族構成。主要な財産は自宅不動産のみ。
- 対策をしない場合: 自宅不動産を誰が相続するかで意見が対立。長男は「同居していたのだから自分が相続すべき」と主張し、二男は「法定相続分どおりに分割を」と金銭を要求。遺産分割調停に発展。
- 遺言書を作成した場合: 「自宅不動産は、今後も住居として利用する長男に相続させる」と明確に記載。二男へは預貯金から代償金として一定額を渡す、または遺留分に配慮した額を遺贈する。これにより、スムーズに手続きが完了します。
弁護士からのアドバイス
- 遺言書は、自筆証書遺言より公正証書遺言を作成することを強く推奨します。無効のリスクが低く、原本が公証役場で保管されるため、偽造や紛失の心配がありません。
- 遺留分(法定相続人が最低限受け取れる財産割合)に配慮した内容にすることで、後の「遺留分侵害額請求」による紛争のリスクを減らせます。
対策2:柔軟な財産管理を可能にする「家族信託」
近年、認知症対策としても注目されているのが家族信託(民事信託)です。
これは、自分の財産を信頼できる家族に託し、目的(例:自分の老後の生活費、子のための資産運用)に沿って管理・運用してもらう仕組みです。遺言書では実現できない、二次相続(子が亡くなった後の孫への相続)の指定も可能です。
【事例で解説】
- ケーススタディ: 夫(高齢)、妻、長男、二男の家族。夫が認知症になった際の財産凍結を懸念。
- 対策をしない場合: 夫が認知症になると、銀行口座が凍結され、自宅の売却や大規模な修繕ができなくなり、家族の生活に支障が出る。
- 家族信託を設定した場合: 夫(委託者)が元気なうちに、長男(受託者)に財産を信託。長男は、信託契約の目的に基づき、夫のために生活費の引き出しや不動産の管理・処分を柔軟に行える。さらに「夫が亡くなったら、財産を妻に渡し、妻が亡くなったら二男に渡す」という連続した承継も設計可能です。
弁護士からのアドバイス
- 家族信託は、設計の自由度が高い分、契約内容が複雑になりがちです。後のトラブルを防ぐためにも、信託の専門知識を持つ弁護士と、税務に強い税理士との連携が必須となります。
対策3:計画的な資産移転を行う「生前贈与」
相続財産の額を減らすことで、将来の相続税の負担を軽減し、かつ確実に財産を渡したい相手に渡せるのが生前贈与です。
【具体的な手法と注意点】
- 暦年贈与の活用(年間110万円まで):
- 年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。複数年にわたり計画的に行うことで、相続財産を減らせます。
- 【注意点】 「毎年同じ時期に、同額を贈与する」と、税務署から「定期金給付契約」とみなされ、初年度に高額な贈与税が課されるリスクがあります。金額や時期を変える、贈与契約書を作成するなど、形式を整えることが重要です。
- 特例制度の活用:
- 教育資金の一括贈与や結婚・子育て資金の一括贈与など、非課税枠が設けられている特例制度を積極的に活用することで、まとまった金額を非課税で移転できます。
- 相続開始前3年(現在は7年へ延長中)の贈与:
- 相続開始前一定期間内の贈与は、相続財産に持ち戻されて相続税の課税対象となります。この期間を意識して、早めに贈与を始めることが節税の鍵となります。
最後に
遺言書、家族信託、生前贈与…どの対策がご家族にとって最適かは、財産の状況、家族構成、そして何よりも「あなたが実現したいこと」によって異なります。
当事務所では、ご相談者様のお話をじっくり伺い、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの生前対策をご提案し、作成から実行までサポートいたします。
「争族」を未然に防ぎ、大切なご家族に平穏な未来を引き継ぐために、ぜひ一度ご相談ください。

