相続トラブルの「出口」が変わった?改正民法・遺留分侵害額請求のポイント
不動産の共有化を防ぎ、円滑な解決をめざすために
「遺言書の内容に納得がいかない」
「長男に全財産を譲ると書かれているが、自分の生活はどうなるのか」
こうした相続の不平等に対し、最低限の取り分を保障するのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。
実は、2019年の民法改正で、この遺留分制度は劇的といっていいほどの変化を遂げました。
この変化を知っているかどうかで、相続トラブルの解決スピードも、その後の親族関係も大きく変わります。
今回は、実務の最前線で重要となる「金銭債権化」の意義と、計算の注意点について解説します。
1. 「物」ではなく「お金」で解決する時代へ
以前の法律では、遺留分を請求すると、土地や建物といった財産が当然に「共有状態」になっていました。
しかし、これが実務上は大きな火種となっていました。
- かつての悩み: 「実家の土地が、疎遠な親族と数分の一ずつ共有になってしまい、売ることも貸すこともできない」
現在の改正民法(1046条1項)では、遺留分は「金銭債権」となりました。
つまり、不動産や株式そのものを返すのではなく、「侵害した額に相当するお金を払いなさい」という請求権に一本化されたのです。
弁護士の視点
なぜこれが「紛争予防」になるのか?
不動産の共有は、いわばトラブルの先送りです。
金銭による解決が原則となったことで、「事業承継で会社の株式を分散させたくない」場合や、「先祖代々の土地を切り分けたくない」といったニーズに応えつつ、遺留分権利者の権利も守れるようになりました。
出口が「お金」と明確になったことで、交渉のテーブルにも着きやすくなったのです。
2. 知っておきたい「遺留分」の計算メカニズム
「いくら請求できるのか」の算出は、単に今の預貯金残高を見るだけでは不十分です。
以下の3つのステップで計算します。
STEP① 算定の土台となる財産を決める
ここが最も専門的な判断を要する部分です。亡くなった時点の財産に、以下のものを足し戻します。
- 相続人への贈与: 亡くなる前10年分の「特別受益(結婚資金や住宅購入資金など)」
- 第三者への贈与: 亡くなる前1年分の贈与
- そこから「借金などの債務」を差し引きます。
STEP② 自分の割合(遺留分率)をかける
- 基本パターン: 財産の 1/2(相続人が子や配偶者の場合)
- 例外(直系尊属のみ): 財産の 1/3
STEP③ 具体的な計算式
【計算式】 遺留分算定の財産価額 × 総体的遺留分 × 法定相続分
例えば、遺産が6,000万円で、相続人が子A・Bの2人の場合、Aさんの遺留分は6000万円 × 1/2 × 1/2 = 1500万円となります。
3. 信頼できる解決のために:計算式以上に大切なこと
法律上の計算式は決まっていますが、実際の相続現場では「財産の評価額」をいくらに見積もるかで対立が起こります。
- 「不動産の評価は、路線価か、それとも時価(実勢価格)か?」
- 「10年前のあの送金は、特別受益にあたるのか?」
これらは、証拠の集め方や過去の審判例の知識ひとつで、結果が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
当事務所では、単に数式に当てはめるだけでなく、「ご依頼者が納得感を持って次の一歩を踏み出せるか」という出口戦略を重視しています。法改正のメリットを最大限に活かし、無用な共有関係を作らず、スピーディかつ適正な金額での解決をサポートいたします。
相続のお悩みは、高松市・玉藻総合法律事務所へ
遺留分の問題は、時間が経つほど贈与の証拠が散逸し、難易度が上がります。「おかしい」と感じたその時に、まずは法的な見通しを確認することをお勧めします。

