【2026年民法改正】②遺言の「ハンコ不要」や「証人ルール」の変更とは?
2026年(令和8年)6月17日、「民法等の一部を改正する法律」等が成立し、同月24日に公布されました。
新しい遺言方式である「保管証書遺言」の創設が大きな話題となっていますが、実は「今すぐ遺言書を作ろうと考えている方」にとって、より直接的に影響する重要な改正がいくつも含まれています。
それが、「押印(ハンコ)の任意化」や「証人の欠格事由(資格なし)の拡大」、そして「緊急時の特別方式の見直し」です。
知らずに古い知識のまま遺言書を作成してしまうと、思わぬ落とし穴にはまったり、遺言自体が無効になってしまったりするリスクがあります。
本記事では、実務に直結する3つの改正ポイントを弁護士が分かりやすく解説します。
※本稿執筆時点では未施行です(押印の任意化等は公布から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます)。
1. 遺言書の「押印(ハンコ)」が任意に!
今回の改正により、自筆証書遺言などを作成する際の「押印要件」が廃止され、ハンコを押すかどうかは任意となります(改正民法968条等)。
押印が不要(任意)になる場面
これまで自筆証書遺言では、全文・日付・氏名を自書したうえで「押印」することが必須であり、ハンコがない遺言書は原則として無効でした。
しかし、今回の改正により以下の場面での押印が任意となります。
- 自筆証書遺言、秘密証書遺言、特別方式の遺言における遺言者や証人等の押印
- 遺言書の内容を加除・訂正(変更)する際の押印
- 財産目録(パソコン作成等)への署名に対する押印(※署名自体は引き続き必須です)
押印漏れによる「せっかく書いた遺言書が無効になる」というトラブルを防ぐ狙いがあります。
ポイント
公正証書遺言は「すでに押印不要」です。
「公正証書遺言も今回の改正で初めて押印が不要になるの?」と誤解されがちですが、実は公正証書遺言における遺言者等の押印要件は、令和5年(2023年)の公証人法改正によりすでに廃止されています。
今回の民法改正は、自筆証書遺言などにその流れが広がったものとご理解ください。
2. 【重要】老人ホームや施設に遺贈したい方は注意!「証人」のルール変更
遺言書を作成する際、公正証書遺言や秘密証書遺言などでは「証人」の立会いが必要です。
法改正により、証人になることができない人(欠格事由)の範囲が拡大されました(改正民法974条)。
なぜルールが厳しくなったのか?
近年、身寄りのない単身高齢者が増加しており、「お世話になった介護施設や病院に財産を遺贈(寄付)したい」と希望するケースが増えています。
しかし、これまでの法律では「受遺者(財産をもらう人)の従業員や役員」が証人になることを明確に禁止する規定がありませんでした。
そのため、施設側の職員が証人になって遺言が作られ、「本当に本人の意思だったのか?」「施設側が無理やり書かせたのではないか?」と後から親族間でトラブルになるケースが懸念されていたのです。
改正後の証人になれない人(欠格事由)
改正法では、証人になれない者として以下のように定義されました。
- 推定相続人、並びにその配偶者及び直系血族
- 受遺者(※推定相続人を除く)、並びにその配偶者及び直系血族
- 受遺者の「被用者(従業員など)」
- 受遺者が法人である場合、その「被用者(従業員)」及び「役員」
施設への遺贈を検討されている方へ
今後、お世話になっている介護施設や医療法人、NPO法人などに遺贈する内容の遺言を作る場合、その施設のスタッフや役員を証人に立てることはできません。
もしスタッフを証人にしてしまうと、遺言書全体が無効になる危険があります。
第三者である弁護士などの専門家に証人を依頼するか、適切な証人を手配することが今まで以上に重要になります。
3. 緊急時の「特別方式の遺言」に録音・録画やメール送信が導入
病気や事故、災害などで生命の危険が迫っているときに作成する「特別方式の遺言」についても、デジタル技術を活用した大幅な見直しが行われました。
① 死亡危急時遺言(病気などで余命いくばくもない場合)
これまでは証人3人以上の立会いが必要でしたが、遺言作成の状況を「録音・録画」することにより、証人1人以上の立会い(ウェブ会議の利用も可能)で作成できる新しい方式が追加されました(改正民法976条の2)。
② 船舶遭難者遺言・大地震等の天災時
大規模地震などの「天災その他避けることのできない事変」が発生した場面が新たに対象に加わりました(改正民法979条)。
さらに、以下の2つの方法が選択できるようになります。
- 遺言を口述する状況を録音・録画し、証人1人以上の立会いで作成する方式
- 録音・録画したデータを特定の者にメール等で送信することで、証人の立会いすら不要とする方式(改正民法979条の2)
不正行為に対する厳罰化(相続権の剥奪)
録音・録画や電子データが認められたことに伴い、これらのデータ改ざんに対する罰則も強化されました。
改正民法891条5号により、「録音・録画された電磁的記録を不正に作製・破棄・隠匿した者」は、相続人の欠格事由に該当し、相続権を失うことになります。
まとめ:法改正に合わせた「間違いのない遺言書づくり」は弁護士にご相談ください
2026年6月成立の民法改正により、遺言書の押印が任意化されるなど手続きの使い勝手が向上する一方で、証人ルールの厳格化(施設の従業員が証人になれない等)など、知らずに作成すると無効になってしまう罠も潜んでいます。
特に、以下のようなご希望をお持ちの方は、法改正のポイントを正しく理解したうえで作成を進める必要があります。
- 老人ホームや介護施設、病院などに財産の一部を譲りたいと考えている
- 親族間でのトラブル(遺産分割協議の難航)を絶対に避けたい
- 自分に合った遺言方式(自筆証書、公正証書、保管証書)がどれなのか分からない
当事務所では、最新の民法改正に完全対応し、お客様の思いが確実に実現されるような遺言書の作成・文面チェック・証人の手配までトータルでサポートしております。
遺言書の作成をご検討中の方は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

